第8回 推論(1) 演繹的推論
今日の内容
人間の思考はどのような時に誤るか?
演繹的推論とはどのような思考か?
思考の適応的な役割
即応性
知覚 → 知識 → 環境への適応
進化 → 長い時間
知識と思考 → 即応性
推論
三段論法
知識 「肉食獣は危険」
知覚 「この動物は肉食獣である」
推論 「この動物は危険である」
演繹的推論
論理的に推論できない場合
← なぜ
← どのような情報処理?
演繹的推論(deductive reasoning)
帰納的推論(inductive reasoning)
演繹的推論
「すべてのカラスは黒い」
→ 「外で鳴いているカラスは黒い」
帰納的推論
「カラス1は黒い」「カラス2は黒い」・・・・・
→ 「すべてのカラスは黒い」
演繹的推論の説明
「規則あり理論」
論理学的推論規則の利用を仮定
「規則なし理論」
規則あり理論
演繹モデル
推論規則の適用
適用する規則がないとき
→ 推論の打ち切り,誤った推論
課題1
演繹モデルによる推論の例
もし命題1が正しければ,命題2も正しいか?
命題1 「もし太郎が働いているのなら
花子は本を読むか,または音楽を聴く」
命題2 「もし花子が本を読んでおらず,
音楽も聴いていないならば,
太郎は働いていない」
規則1
¬ (P or Q) ⇔ (¬P)and (¬Q)
¬ 否定
⇔ 同値
規則2
もしPならばQ ⇔ もし¬Qならば¬P
難しさ
2つの規則を知っていることが必要
オシャーソン(Osherson, 1976)
各規則の難しさの総和=全体の難しさ
規則なし理論
メンタルモデル理論
与えられた問題を記述する心的表象
記号,視覚的イメージ
課題2
メンタルモデルの例
命題1 「もしキングがあれば,エースがある」
または
命題2 「もしキングがなければ,エースがある」
「キングがある」
確実なことは何か言えるか?
「エースがあるのは確実」???
排他的選言(exclusive or)
A xor B
A または B
A でもBでもある場合は除く
「コーヒーまたは紅茶が付きます」
図8−1
命題1
キングがない場合
命題2
キングがある場合
2つの命題のどちらかが成り立つ
どちらかわからない
「エースがある」とはきめられない
なぜ,「エースがある」と推理するか?
「多くの人は,問題が明示することだけをメンタルモデルにする傾向がある」
規則を仮定しない
まとめ
演繹的推論の説明
「規則あり理論」
論理学的推論規則の利用を仮定:演繹モデル
「規則なし理論」
規則を仮定しない:メンタルモデル
定言三段論法
すべてのAはBである (大前提)
すべてのCはAである (小前提)
∴すべてのCはBである (結論)
妥当な推論
すべての昆虫は植物である
すべての蝶は昆虫である
∴すべての蝶は植物ある
結論は事実と一致しない
推論は妥当(valid)
信念バイアス
すべての学生は人間である
ある人間は女性である
∴ある学生は女性である
妥当な推論か?
すべての学生は生物である。
ある生物は樹木である。
∴ある学生は樹木である。
信念のバイアス
結論や前提が信念と一致しているか,で判断
← 実生活
論理的に妥当であるよりも、
結論が正しいかどうか、が重要
前提の判断 → 確率的
前提が正しいのか
推論が正しいのか(妥当なのか)
不明??
結論 → 推論の妥当性
Reaction paper 課題
定言三段論法では、どのような時に誤り(妥当ではない推論)が起きやすいか?
ウェイソンの選択課題
4枚カード問題
「もしその文字が母音なら,
その裏の数字は偶数である」
もしPならばQ ⇔ もし¬Qならば¬P
なぜ「4」をめくるか?
P→Q
P⇔Q
「宿題をしたら,おやつをあげますよ」
否定式の使用
もしPならばQ ⇔ もし¬Qならば¬P
困難
仮説検証
反証可能性
4枚カード問題は,どのような場合に正答率があがるか?
主題材料効果
抽象的な材料よりも,テーマをもった材料の場合に,正答率があがる
ジョンソン−レアード (1972)
なぜ?
「具体的だから」?
→ 恣意的なルールでは生じない
「実用的推論スキーマ」理論
許可スキーマ
P 許可の対象となる行動
Q 許可する条件
「ビールを飲むならば,
20歳以上でなければならない」
「許可」場面以外では使えない
社会契約理論
「裏切り者」を検知するための,
生得的なアルゴリズム
コスミデス (1989)
進化 → 集団の維持 裏切り者の検知
「利益を得るためには,
対価を払わなければならない」
検証
「キャッサパを食べている者は,
刺青をしなければならない」
主題材料効果
「行動をとるならば,
条件をみたしていなければならない」
許可ルール
「利益を得るためには,
対価を払わなければならない」
利益ー対価
<許可ルールに含まれる?
「ビールを飲むならば,
20歳以上でなければならない」
利益ー対価関係をふくまない
→ 裏切り者検知アルゴリズムでは,
主題材料効果を説明できない
「こぼれた血をふくならば,
ゴム手袋をしていなければならない」
危機管理アルゴリズム?
生得的なプログラム??
簡潔な説明ではない
パーシモニーの原理
オッカムの剃刀
「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」
思考と遺伝
社会契約理論
生得的プログラム
実用的推論スキーマ
経験によって獲得されたプログラム
情報獲得理論
義務論的
Pならば,Qでなければならない
直接法的
PならばQである
P Q 情報の獲得
Reaction paper 課題
4枚カード問題で,主題材料効果はどのように説明されるか?
事前課題
2−4−6課題で,参加者の課題は何か?