第11回 言語(1) 言語の特性
心理言語学
言語を心理学の観点から心理学の方法で研究
言語の特性
個人の情報処理 ⇒ 結果を他人に伝える
手段としての言語
人間の適応力の向上
伝承,文字
現代文明
伝達媒体としての言語
情報伝達の媒体
動作
言語(音声)
音声と意味の関係 ⇒ 恣意的
恣意的な関係 ⇒ 規則 ⇒ 記憶
系列的な情報処理
視覚的伝達 同時並列的
言語的伝達
系列的発話 ⇒ 聴取:情報の一時的保持
系列的な音声 : まとめる(構造化)ための規則
文法(統語規則)
動物の音声コミュニケーション
音声 ⇒ コミュニケーション
鯨,イルカ
チャボ
人間の言語の特性
1 恣意性
音声 ←→ 表す対象,状況
恣意的な関係
動物の場合:
特定の音声 = 特定の状況
固定した関係
2 転移性
対象がない場合でも,言語を使用する
3 二重性
意味のない音の組み合わせ
⇒ 意味のある単語
キタ タキ
動物の音声 : 分解できない
4 生産性
有限の単語 ⇒ 無限の文
心理言語学
ミラー G. A. Miller
情報処理パラダイム
チョムスキー 言語学者
⇒ 心理言語学の誕生 1950年代の終わり
句構造の実在性
句構造 phrase structure
文
名詞句 動詞句
限定詞 名詞 動詞 名詞句
構文解析木 parse tree
文 ⇒ 句構造
句構造規則 phrase-structure rule
句構造の心理学的実在性
発話の切れ目 pause
言い直し
母語の習得
1 発話の発達
喃語 言語に似た音声
一語発話 ワンワン (一歳)
二語発話 ワンワン,オネンネ (一歳半)
機能語を欠く
助詞,助動詞がない
ワンワン,オンモ,イク
機能語: 単語と単語の関係を示す
統語的関係
語彙爆発 一歳半〜
単語を憶えるペースが加速
2 言語音の区別
乳児 : さまざまな音声を区別
⇒ 母語にある言語音の区別
他の言語音の区別は消失
3 文法の学習
文法的規則の習得
過去形 go → went
goed
4 コンピュータによる文法の学習
ラメハート と マクレランド (1986)
コンピュータに文法を学習させる
⇒ 幼児と同じまちがい
go → went → goed → went
規則の学習ではなく,事例の記憶
潜在的な文法規則学習の可能性
Reaction paper課題
句構造の心理学的実在性の根拠をあげなさい
第二言語の学習
第二言語 second language
臨界期 critical period
水鳥 刷り込み imprinting
ローレンツ Lorenz (1952)
外国語の習得にも臨界期?
こどもは「自然に」学習するのか
言語習得に臨界期はあるのか
子どもとおとなの言語の違い
こどもの言語 限られた語彙,単純な構文
おとなの言語 大量の語彙,複雑な構文
「違い」を統制
→ 12歳より上の子どもほうが第二言語の修得は早い
年長者のほうが,言語を学習する認知的能力が発達している
第二言語の学習は,
おとなになってから始めたほうがよいのか
ジョンソンとニューポート (1989)
移住者の第二言語の習得
移住した年齢が高いほど,文法的な能力が劣っている
人間の言語学習に,明確な臨界期は存在しない
言語学習に有利な敏感期(sensitive period)はある
早い時期に始めると,高い習熟度に到達
音声的な能力
2つの言語の同時習得
幼児期の第二言語学習
→ 可能か,困難か
理解が遅れるか
習得は環境に依存
混同は生じるか
バイリンガルの知能
2つの言語を習得すること
→ 悪影響?
2カ国語の習得 → 知的能力の発達
言語と思考
「言語相対性仮説」
世界の見え方は言語によって相対的
サピア- ウォーフ仮説
(ウォーフ仮説)
思考=言語
ウォーフの議論
ホピ語の例
鳥以外の飛ぶもの 「マサイタカ」
言語の違い ⇒ 思考の違い
思考も違うのか??
色名と色の知覚
基本色名 「赤」
ウォーフ
電磁波 ⇒ 色名 ⇒ カテゴリー知覚
バーリンとケイ (1969)
基本色名の数は,言語によって異なる
ハイダー(1972)
基本色にない色は,識別できないのか?
ダニ族
基本色名 2語
「ミリ」 明るい色
「モラ」 黒っぽい色
⇒ 赤,黄,青,緑 見分けられる
色の記憶と色名
ロバートソン ほか (2000)
色の記憶 ← 色の名前 影響
色の知覚 : 色名は影響しない
色の記憶 : 多少影響する
(言語ラベルの効果)
抽象的な思考
色の知覚 : 生得的なメカニズム
抽象的な思考 : 経験の効果
← 言語の影響?
ブルーム 反事実的条件法
事実に反した仮定した推論
科学的思考
中国語,日本語に存在しない
⇒ 科学的思考が劣るか?
ブルーム(1981,1984)
反事実的思考
アメリカ人>中国人
再現性なし
数学的知識の影響
非言語的思考
思考≠言語
言語を用いない思考の存在
「言語は思考に影響するか」?
非言語的情報処理
思考のシミュレーション→自然言語では困難
なぜ「思考=言語」という実感が生じるか
思考 ⇒ 言語 ⇒ 意識
思考過程からの出力(の一部)
思考過程への入力(の一部)
次回への事前課題
単語優位効果とは何か?
Reaction paper 課題
思考が言語に影響されないことを示す研究例をあげなさい