第7回 第五部 現実場面における実験(1)
さまざまな実験 準実験(横断的比較)
さまざまな実験法
• 実験室実験
• 質問紙実験
• 現場実験
• 自然実験
それぞれの特徴
(現実性,倫理,代表性,実行可能性)
→ 目的,テーマによって,最適な方法を選択
1 実験室実験
• 因果関係が明確,再現性が高い
• 限界
• 「日常的現実性」が乏しい
• 倫理的問題
• 被験者の代表性
• 社会心理学,臨床心理学では?
認知心理学の実験例
• 目撃証言の信頼性
ロフタス ほか 1978
• 目撃証言
– ロフタス ほか 1978
– 写真提示 「停止」標識
– 質問
• 「停止」
• 「徐行」
– 記憶テスト
• 「停止」条件 → 正答率 75 %
• 「徐行」条件 → 正答率 41 %
• 誤った情報に接すると,なかった物を見たと思い込む
• メタ記憶
– 自分の記憶についての認知:限界
2 質問紙実験
• 質問紙実験
– 多くのデータを集める
– 倫理的問題の回避
• 場面想定法
– 現実性の低下
3 現場実験,自然実験
• 被験者の現実的な生活のなかで実験を実施
• 現実性が確保される
現場実験
• 研究者が独立変数の操作,剰余変数の統制を人為的におこなう
自然実験
• 社会の中にもともと存在する変数を利用
例
現場実験
「テレビの暴力シーンの視聴 → 攻撃性」
寮生活の学生
独立変数:
無作為に選んだ部屋のテレビ : 暴力番組を操作
従属変数:
日常行動の観察(けんか,暴力的言動)
• 倫理的な問題
– 実験参加者の生活に影響を与えている
自然実験
もともと存在した配分を利用
暴力シーンが映るテレビ : 抽選で決定
(研究者が関与しない無作為配分)
• 倫理的な問題を回避できる
• 研究の目的に合致した操作や配分の機会を見つけることが困難
→ 実行可能性が低い
現場実験,自然実験における被験者の代表性
• 実験室実験よりも被験者の代表性は高い
質問紙実験のほうが,さらに代表性は高い
Reaction paper 課題
暴力番組の影響を検証する自然実験を,
実験室実験,質問紙実験,現場実験と比較し,
• 優れている点
• 問題点
をあげなさい。
準実験
Quasi-experiment
剰余変数の統制を犠牲にして,実験の問題を克服する
無作為配分が困難な場合
• 横断的比較
• 縦断的比較
横断的比較
例)
テレビ(暴力番組群,対照群)
研究者が無作為配分 → 現場実験
もともと学校が無作為に配分 → 自然実験
実際には,無作為配分が困難
→ 両群が等質ではない
(テレビの視聴→暴力行動:因果関係が不明)
• 事前テスト
• 複数の対照条件
• 不等価従属変数の導入
1 事前テスト
• 事前テスト
例) 暴力番組条件 対照条件
事前テスト 攻撃性 ≦ 攻撃性
事後テスト >
暴力番組 → 攻撃性の上昇
例) 暴力番組条件 対照条件
事前テスト 攻撃性 > 攻撃性
事後テスト >>
差が拡大
暴力番組 → 攻撃性の上昇
• 「不等価二群 事前事後テスト計画」
• 事前テストがなければ
→ 「偽実験」
比較基準がないので,因果関係が不明
複数回の事前テスト
例) 情報技術の導入 → 学力の向上
• 不等価二群 事前事後テスト計画
導入校 非導入校
事前テスト 2年生4月 学力を測定
事後テスト 3年生4月 学力を比較
1年間の長期的変化のため?
(他の変数の可能性)
• 複数回の事前テスト
導入校 非導入校
事前テスト① 1年生4月 学力を測定
事前テスト② 2年生4月 学力を測定
事後テスト 3年生4月 学力を比較
①→② 学力の伸び <事前事後の学力変化
(二群間に差なし) (二群間に有意差)
長期的変化による影響の可能性は低い
2 複数の対照条件
• 学力の向上
← 事前テストの基礎学力
他の個体差変数(学習意欲)で差があった可能性
複数の対照条件
他の個体差変数も差がある
導入校 > 複数の非導入校
実験条件の水準を「挟む」
• 複数の対照条件の水準
実験条件と対照条件を可能な限り同質に
困難→実験条件の従属変数の水準を「挟む」
導入校 非導入校① 非導入校②
事前テスト 学力(中) 学力(上) 学力(下)
事後テスト 学力(上) 学力変化を比較
他の変数による説明を弱める
3 不等価従属変数の導入
• 独立変数によっては影響されず,他の変数によって影響される従属変数を導入する
「不等価従属変数」
他の変数が原因ならば
→ この従属変数も変化
例
他の変数によって影響される従属変数:
体育の成績
導入校 非導入校
事前テスト 数学 体育 数学 体育
事後テスト 数学 > 数学
体育 = 体育
Reaction Paper 課題
• 複数の事前テストを実施して,横断的な準実験をおこなうことのメリットは何か?
• また,どのような場合に介入の効果を主張できるか?
次回への事前課題
• 一群事前事後テスト計画では,介入の効果以外のどのような要因の影響が否定できないか?