第9回
心理学に特有な問題(1)
実験の人工性と生態学的妥当性
要求特性/実験者効果
観察反応
• 被験者が観察されていることを自覚
↓ 普段とは異なる反応を示す
• 実験が持つ 「要求特性」
• 実験者の影響 「実験者効果」
要求特性
• 実験の人工性/非日常性
• 生態学的な妥当性の問題
– 自然な状況の心理現象を扱っているか
↓ 十分条件であっても
「必要条件ではない」
• 心理学実験の非日常性/人工性
↓ 日常では観察できない現象の観察
逆さ眼鏡実験
• 非日常性/人工性が,目標とする心理現象に(剰余変数として)重大な影響
• その影響について研究者が気づいていない
実験が暗に備える「要求特性」
Demand Characteristics
① 社会的に望ましい被験者
• 被験者に,ある特定の反応を要求する圧力
「要求特性」
社会的に望ましい反応
• 対策
• 記名式 → 匿名
• 反応の守秘
② 実験者にとって望ましい被験者
• 「よい被験者」になりたい
↓ 実験者の「意図」を読み取ろうとする
「正解」 「仮説」 をさがす
• ホーソン効果
工場における作業効率 ← 照明条件 ?
↑ 選ばれたことによる動機づけ
• 「仮説」「正解」が,あらかじめ被験者にわかると・・・・
例)
内発的動機づけ
「外的な報酬 → 内発的動機づけの低下」
実験
パズルを解く
→ 報酬 あり/なし
「報酬を与えられると,自由時間にパズルを解く時間が短くなる」
被験者が仮説を知っていたら?
• 実験者の意図を見抜いたら?
←→ あらかじめ,仮説を教えない
⇒ 仮説,意図を探ろうとする
実験者が,無意識に手がかりを与えてしまう
要求特性への対策
• 被験者に偽りの目的や仮説を教示する
「ディセプション」 deception
例) 内発的動機の実験
「報酬が学習に及ぼす効果を調べる」
偽りの目的
↓ 被験者が推測する仮説
報酬 ⇒ 学習が進む, 行動が促進される
実験者の仮説と逆
それでも, 「報酬 ⇒ パズルを解かない」
ならば, 「要求特性の影響」を否定
• 実験に関係のないカバーストーリー
• 被験者に納得のいくもの
• 実験条件と交絡しないもの
• 独立変数の処置, 従属変数の測定
⇒ 別の文脈におく
例)
実験場面 (報酬の有無)
測定場面 : 実験者が退出
• 被験者に観察されていることを知らせない
⇒ 原理的に,要求特性の影響は生じない
マジック・ミラー
フィールド実験
「信号待ち」を観察
:被験者になっていることに気づかない
③ 暗示効果
• プラセボ効果(プラシーボ効果)
「偽薬効果」 プラセボ (placebo)
偽薬でも,効果があると被験者が信じれば,効果が観察される
対照条件を設定する(盲険法)
二重盲検法
④ 新奇性効果
• 新奇性 ⇒ 行動を促進する
「新しい教授法」 の効果
新しいだけで,効果をあげる
対照条件の設定
Reaction paper 課題1
• 実験の持つ要求特性には、どのようなものがあるか?
• 対策をあげなさい。
実験者効果
• 実験者の持つ「欲求,先入観」
⇒ 実験者の期待効果 ⇒ 要求特性
「実験者の期待」 検証,追試
← 研究計画,実験手続き
客観性の保証
• 実験者がもちこむ無意識的バイアス
例)
内発的動機づけ ⇒ パズル
実験者:パズルに目をむける?
無意識的行動
実験者効果への対処
• 実験者による無意図的な情報,手がかりの表出 → 無知手続き
• 実験の目的,仮説を知らない実験者を用意
二重盲検法 Double-blind Method
• 被験者の条件を,実験者に知らせない
• 複数の実験者
• 実験手続きの標準化
教示,行動を標準化
実験の自動化
コンピュータによる制御
• 実験者の慣れ(不慣れ),疲労
パイロットテスト(予備実験)
Reaction paper 課題2
• 実験者効果の例をあげなさい。
• 対策をあげなさい。