秋学期 第4回
心理学に特有な問題(1)
実験の人工性と生態学的妥当性
要求特性
事前課題
実験に参加する時に,暗に被験者が受ける影響にはどのようなものがあるか?
観察反応
被験者が観察されていることを自覚
↓
普段とは異なる反応を示す
実験が持つ 「要求特性」
実験者の影響 「実験者効果」
要求特性
実験の人工性/非日常性
生態学的な妥当性の問題
自然な状況の心理現象を扱っているか
↓
十分条件であっても
「必要条件ではない」
心理学実験の非日常性/人工性
↓
日常では観察できない現象の観察
逆さ眼鏡実験
非日常性/人工性が,目標とする心理現象に(剰余変数として)重大な影響
その影響について研究者が気づいていない
実験が暗に備える「要求特性」
Demand Characteristics
① 社会的に望ましい被験者
被験者に,ある特定の反応を要求する圧力
「要求特性」
社会的に望ましい反応
対策
記名式 → 匿名
反応の守秘
② 実験者にとって望ましい被験者
「よい被験者」になりたい
↓
実験者の「意図」を読み取ろうとする
「正解」 「仮説」 をさがす
ホーソン効果
工場における作業効率 ← 照明条件 ?
↑
選ばれたことによる動機づけ
「仮説」「正解」が,あらかじめ被験者にわかると・・・・
例)
内発的動機づけ
「外的な報酬 → 内発的動機づけの低下」
実験
パズルを解く
→ 報酬 あり/なし
「報酬を与えられると,自由時間にパズルを解く時間が短くなる」
被験者が仮説を知っていたら?
実験者の意図を見抜いたら?
←→ あらかじめ,仮説を教えない
⇒ 仮説,意図を探ろうとする
実験者が,無意識に手がかりを与えてしまう
要求特性への対策
被験者に偽りの目的や仮説を教示する
「ディセプション」 deception
例) 内発的動機の実験
「報酬が学習に及ぼす効果を調べる」
偽りの目的
↓
被験者が推測する仮説
報酬 ⇒ 学習が進む, 行動が促進される
実験者の仮説と逆
それでも, 「報酬 ⇒ パズルを解かない」
ならば, 「要求特性の影響」を否定
実験に関係のないカバーストーリー
被験者に納得のいくもの
実験条件と交絡しないもの
独立変数の処置, 従属変数の測定
⇒ 別の文脈におく
例)
実験場面 (報酬の有無)
測定場面 : 実験者が退出
被験者に観察されていることを知らせない
⇒ 原理的に,要求特性の影響は生じない
マジック・ミラー
フィールド実験
「信号待ち」を観察
:被験者になっていることに気づかない
③ 暗示効果
プラセボ効果(プラシーボ効果)
「偽薬効果」 プラセボ (placebo)
偽薬でも,効果があると被験者が信じれば,効果が観察される
対照条件を設定する(盲険法)
二重盲検法
④ 新奇性効果
新奇性 ⇒ 行動を促進する
「新しい教授法」 の効果
新しいだけで,効果をあげる
対照条件の設定
次回への事前課題
実験者が,無意識にもちこむバイアスを避ける方法には,どのような方法があるか?
Reaction paper 課題
実験の持つ要求特性には,どのようなものがあるか?