秋学期 第5回 心理学に特有な問題(2):実験者効果 内観法の限界と対策
事前課題
実験者が,無意識にもちこむバイアスを避ける方法には,どのような方法があるか?
実験者効果
実験者の持つ「欲求,先入観」
⇒ 実験者の期待効果 ⇒ 要求特性
「実験者の期待」 検証,追試
← 研究計画,実験手続き
客観性の保証
実験者がもちこむ無意識的バイアス
例)
内発的動機づけ ⇒ パズル
実験者:パズルに目をむける?
無意識的行動
実験者効果への対処
実験者による無意図的な情報,手がかりの表出 → 無知手続き
実験の目的,仮説を知らない実験者を用意
二重盲検法 Double-blind Method
被験者の条件を,実験者に知らせない
複数の実験者 cf. 複数の観察者間の一致度
p.225 コーエンのκ係数
実験手続きの標準化
教示,行動を標準化
実験の自動化
コンピュータによる制御
実験者の慣れ(不慣れ),疲労
パイロットテスト(予備実験)
Reaction paper 課題
実験者効果を最小にするための対処法をあげなさい。
要求特性と実験者効果を統制
例: 精神物理学的測定法
標準化された実験法
要求特性による誤差
被験者の予測 ⇒ 誤差として特定
期待誤差,固執誤差
調整法(前期第10回)
被験者が比較刺激を調整
可変の比較刺激を調整し、それが標準刺激と同じに見えるようにする
⇒ 全知手続き
実験例
ミュラー・リヤー錯視
極限法
調整法とのちがい
実験者が刺激を一定方向に変化させる
一定の幅で不連続に変化させる
⇒ 半知手続き
期待誤差
予期的反応
慣れの誤差
同じ反応の繰り返し
上昇系列と下降系列のPSEを比較
(極限法,調整法 共通)
恒常法
実験者が刺激を不連続に変化
(極限法、上下法と同じ)
一定方向でなく、ランダム順に提示
(極限法、上下法と異なる)
⇒ 無知手続き
測定値が独立 → 高度な処理に適切
実験の自動化
刺激提示 ⇒ 標準化(自動化,無作為化)
実験者効果の排除
例2 :言語的な測度の場合
SD法
標準化された方法
被験者が使用する言語を絞る
多様な言語を用意する
提示方法を工夫(無作為化)
予測,期待の影響を統制
⇒ 要求特性,実験者効果の影響を最小化
SD法の実施
形容詞の抽出
評定用紙の用意
(刺激+練習)×被験者数
形容詞対の順序をランダム
評定の方向をランダム
被験者数 (最低でも20人)
SD法:結果の分析
プロフィールの作成
相関分析,因子分析
心理学に特有な問題: 内観法
言語報告の特性
要求特性,実験者効果の影響を受けやすい
影響の程度を評価することが困難
限界
意識を対象とする
言語を用いる
⇒ 要求特性,実験者効果の影響を受けやすい
言語報告されたこと : 原因か?
従属変数である ← 原因は何か
言語報告の多義性
解釈の余地
実験者効果の影響
対策
他の測度との関係を分析: 多重測度
因果関係 ← 法則的理論
「質的研究法」をめぐって pp.230-234
Grounded Theory Approach
言語報告の多義性
仮説の生成
検証へ
心理学に特有な問題 補足
「被験者の嘘を見抜くことはできるか」
被験者 ⇒ 意図した虚偽の反応が可能
虚偽内容を言語報告する
反応を偽る
(見えない,聴こえない,知らない)
見えないのに「見える」と答える
⇒ 誤反応として検出可能 (正答率 chance level)
見えているのに「見えない」と答える
⇒ 誤反応では検出できない (誤答を装う)
虚偽反応を検出する
生理指標(意識的に制御不可能)
GSR (Galvanic Skin Response) ポリグラフ
脳波
fMRI
生理反応=見える?
行動指標
明らかに「見える」刺激を無作為に提示
虚偽反応を減少させる
デセプション
虚偽反応 ⇒ 被験者の利益を減少させる
(見えない ⇒ 減点)(見える ⇒ 加点)
次回への事前課題
研究(実験)をおこなう際に,被験者に対して配慮すべきことを1つあげなさい。