秋学期　第７回　
第七部　実験の計画から実施，結果の分析へ（１）

​：実験の実施

（実験のアイディアと理論の実証）

​

実証的研究の目的

理論の検証

理論による世界の理解

 

すでに得られている事実を矛盾なく説明

理論から「演繹」される予測

⇒　理論（仮説）　　支持される／反証される

仮説演繹法　　Hypothetico-deductive method

 

 

実証的研究の手順

準備

発案

研究計画の立案

実施

結果の分析

報告

 

事前課題

テキスト　p.286 ～

研究のアイディアは

どのようにして生まれるか？

​

​

研究のアイディア

演繹：　理論から新しい予測を導きだす

発展：　未説明に事実を説明する仮説

止揚：　対立する理論を統合

総合：　関連する事実を総合的に説明

説明多重化：　別の説明を提出

 

日常観察

触発／セレンディピティ

 

 

どのような説明をめざすか？

一般性

新たな事実を説明する

より総合的に事実を説明する　（外的妥当性）

簡潔性

より簡潔、明快に説明する　（内的妥当性）

オッカムの剃刀　（より簡潔な説明を採用）

文献の探し方

時間を過去に遡る

 

本　⇒　引用文献

 

展望論文　「心理学評論」

「心理学研究」　「教育心理学研究」

Medline 　PubMed

J-stage, CiNii

 

時間を現在まで下る

 

　　過去の文献　⇒　現在，引用している文献

 

Reaction paper 課題

実験のアイディアは，どのようにして得られるか，述べなさい。

 

 

研究例

Unuma, Hasegawa, & Kellman (2010)

 

知覚的群化　perceptual grouping

ゲシュタルト心理学　

空間的統合　

　spatial integration

 

⇒時間・空間的統合 

spatiotemporal integration

 

 

空間的統合

視覚的情報貯蔵　

visual information storage

 

⇒　時間空間的統合：　演繹

 

時間空間的な情報入力　→　統合　→　知覚

 

知覚的体制化と統合機能：　総合

 

 

Unuma, Hasegawa, & Kellman (2010)

情報の時間空間的入力を操作：独立変数

あらたな現象の説明　：　発展

 

方法の工夫

精神物理学的測定法

上下法（階段法）

 

測度：従属変数

　知覚された輪郭線の位置　PSE

  精度　＝　誤差　（上下の閾の差）　　

 

 

上下法の例

 

Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 29, Guttman, S. E., Sekuler, A. B., & Kellman, P. J., Temporal variations in visual completion: A reflection of spatial limits? pp. 1211-1227, Copyright 2003

 

誘導図形を継時提示

 

主観的輪郭線付近に小点を提示（上下法）

→　輪郭線の内か外か？

 

輪郭線の精度 precision を推定（UT-LT)

全体の提示時間< 180 ms 

→　精度の高い輪郭

 

確度 accuracy　

輪郭線（PSE)は物理的な位置からずれる

 

新たな事実　

180 ms以内で，時間空間的統合が成立

知覚された輪郭は物理的な位置から偏る

 

新たな理論へと発展

　　時間空間的統合理論　（鵜沼， 2013）

 

鵜沼秀行　（２０１３）

 

『対象の認識における情報の

時間空間的統合と知覚的

表象の形成』

早稲田大学モノグラフ85 

早稲田大学出版部 

 

 

次回への事前課題

研究をはじめる前に作成する研究計画書には何を書くか？