第6回 第二部 独立変数の操作 (1)
独立変数の操作:種類と手続き化
独立変数の種類 独立変数
表 4.1
• 直接的
• 概念的
• 「自尊心の低下」:概念的(心理変数)
• 明るさの刺激閾の測定
精神物理学的測定法
(恒常法)
– 独立変数 : 物理的な明るさ
手続き:光源の輝度
– 従属変数 : 「見えた」という反応 手続き : 反応の生起確率 50%
恒常法
• 決められた数(4~8個)の刺激
• ランダムな順序で各刺激50~200回被験者に提示
• 刺激変化と判断比率Pとの関数(回帰直線など)
• → 心理的定数
(P=50、75%となる刺激値など)
Reaction paper 課題 1
• 愛着(アタッチメント)の測定
pp.215-216
– ストレンジ・シチュエーション法
• 子どもにストレスを経験させ,行動を観察する
• 従属変数:母親への子どもの反応
• 独立変数は?
表4.1
直接的,
概念的(諸変数の代表),
概念的(心理変数)
手続き化
具体的手続き → 多重の意味(他の心理変数?)
例:自尊心の低下 → 違反行動の増加
• 成績のフィードバック
→ 自尊心の低下 or 怒り
補助仮説は適切か?
純化
独立変数の具体的手続きへの忠実な翻訳
• 手続きが充分に洗練されていない場合
– 独立変数 「アイコンタクト」
– 具体的操作手続き
アイコンタクトの仕方,訓練
– 剰余変数の統制
• 操作が多重の意味をもつ場合
– 独立変数 「自尊心の低下」
– 具体的操作手続き
「成績のフィードバック」
→ 自尊心の低下 or 怒り
どのようにして多重の意味を「純化」するか – 被験者の受け取り方を考慮
– 多重操作
多重操作
• 実験的な操作手続きの意味を限定する
– 複数の手続きに翻訳
– 独立変数 「自尊心の低下」
手続き 「成績のフィードバック」 + 「友人との仲違い」
同じ結果
← それぞれの「意味」の共通点
「他の説明の可能性」 を排除する
(多重の意味 → 限定)
p.51
実験例 1
心的イメージの検証
こころに思い浮かべたイメージは視覚的か? 仮説 「イメージが視覚的ならば, → イメージ内の距離が大きいほど,たどるために時間がかかる」
• 具体的手続き
コスリンの実験 「イメージ走査」
• 何度も書き写して正確に記憶する
• テスト 地図のイメージを想起
• ある地点が地図にあったか?
• 「岩場」 → 黒点をイメージ
• 「池」 → 移動 「Yes」
• 反応時間を測定
• 結果
2点間の距離が大きいほど,反応時間が長い
• 何が言えるか?
仮説 「イメージが視覚的ならば, → イメージ内の距離が大きいほど,たどるために時間がかかる」
具体的手続き
地図のイメージを想起
• ある地点が地図にあったか?
• 「岩場」 → 黒点をイメージ
• 「池」 → 移動 「Yes」
• 「時間がかかった」からと言って,「イメージが視覚的」とは限らない (後件肯定の誤謬)
• 他の説明の可能性は排除されたか?
– 黒点教示を除く
– 第2地点があったら,すぐに反応
→ 反応時間は距離に関係なく一定
• 批判
– 黒点教示が,物理的な世界の知識を使わせた (ピリシン 「暗黙知」)
• 新たな課題 (独立変数の多重操作)
フィンケとピンカーの実験
矢印の近くに×があったら「Yes」
反応時間測定
• 反応時間が,矢印から×までの距離に比例 • 知識の介入する余地が最小
• 知識による説明の排除
→ イメージは視覚的である
ここまでの まとめ
• イメージ内の対象までの距離:独立変数 → 具体的手続きに翻訳
コスリンの手続き 他の説明の可能性
フィンケの手続き いくつかの手続きから,総合的に純化を判断
Reaction paper 課題 2
• フィンケらの実験では,どのような操作が純化を可能にしたか?
• その結果,どのような説明が排除されたか?
実験例 2
心的回転 mental rotation
シェパード と メッツラー 1971
クーパー と シェパード 1973, 1984
問題: 心的イメージを回転するか?
• シェパード と メッツラー (1971) から言えることは何か。またその根拠は?
• ほかの説明の可能性はないか?
クーパーとシェパード (1973)
• クーパーとシェパード (1973) から言えることは何か。また,その根拠は?
• 独立変数の多重操作
– 材料
– 予告刺激
心的回転 mental rotation シェパード と メッツラー 1971
↓
何が多重操作として,追加されたか
クーパー と シェパード 1973, 1984
多重操作によって,何が言えたか
次回までの事前課題
次回のテーマ 独立変数の水準の設定
pp.52-62 仮説 「鋏辺の角度が錯視量を規定する」 操作する角度の水準をどのようにして決めるか