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知覚学習

 ゴールドストーン(Goldstone, 1998)は、知覚学習を短時間の順応や注意の移動、方略の変化などと区別して、以下のような永続的なシステムの変化として説明しています。(1)注意の重みづけ:重要な特徴、情報に注意を向けること。同時に、無関係な特徴、情報への重みを減らす。(2)刻印づけ:刺激やその一部に結びつけられた検出器(detector)を組み込むこと。(3)分化:ある知覚が他の知覚から分離されること。(4)ユニット化:複数の刺激が情報処理の新たな単位を形成すること。

 さらに、ケルマンら(Kellman,2002; Kellman et al., 2008)は、知覚学習が環境の中の不変の特性(不変項 invariance)を抽出する点を重視して、知覚学習には不変項の発見(discovery)と処理の流暢性(fluency)の獲得の2段階があるとしました。彼らはこれを実証するために、学習者が個別に学習材料の分類学習を行うことで、知覚レベルの学習を達成する学習アルゴリズム(PLM: Perceptual Learning Module)を提案しました。PLMは直接、学習に介入することによって学習者の知覚学習を促進し、最終的に学習者の課題解決を支援する試みと言えます。この考え方を実践した研究には、以下のようなものがあります。

(1)数学(代数、比率)の学習における効果(Kellman et al., 2008)

(2)分数の大小判断における効果(鵜沼・長谷川・Kellman, 2016,2017)

(3)医学教育におけるレントゲン写真の知覚(Kellman, 2013)

(4)パイロットの教育(Kellman & Keiser, 1994)

(5)自然の事物の分類(Mettler & Kellman, 2014)

(6)異文化の表情の知覚(Unuma & Hasegawa, 2016)

(7)ジグソーパズル課題における効果(Unuma, Hasegawa, & Kellman 2012)

知覚学習を促進する方法

 私たちの研究は、課題解決や学習の知覚的な側面の学習を、具体的な手続きによって促進することができることを示唆しています。この手続きが、最終的に学習や課題解決を促すために、いくつかの原則があります(Kellman, et al., 2008; 鵜沼・長谷川、2013)。

(1)対象の構造との交渉:学習する材料に含まれる重要な情報は、個々の要素ではなくそれらの関係(構造)です。その構造に注意を向け、関係のない情報を処理しないことが必要です。

(2)課題解決の未遂行:数学の課題ならば、知覚学習の段階では実際に問題を解くことはありません。重要な情報を見つけることが学習です。

(3)変化する事例との多数の分類試行:重要な情報の発見は、様々に変化する多数の事例を分類する試行を反復することで可能となります。

 

 この原則に加えて、学習者の反応に応じてフィードバックの与えかたを変化させる(Mettler & Kellman, 2014)などの、様々の工夫が可能です。これらの方法は、具体的な手続きとしてコンピュータ・プログラムに実現されており、米国では特許を取得しています。

 

UCLA Kellman Lab: Perception and Cognition: Applications to Learning Technology

(2018/05/05 Hideyuki UNUMA)

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